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2015年11月07日

ツタヤ図書館

巷で話題のツタヤ図書館,もとい海老名市立中央図書館に行ってみました.いわゆるTSUTAYAを運営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が受託運営を行う図書館というものが実際どういうものなのか,一度実態を自分で見てみたかったからであります.

戸澤個人の感覚で言えば,『公共図書館としてこれは無い』というのが結論.

まず,公共図書館と書店が合体,さらにスターバックスも入居.しかも,同じ建物で併設(つまり異なる入口があって,空間が隔てられている)されているのではなくて,一つの空間をこれらが共有しているのが特徴.何かしらのセキュリティゲートがあって「ここまで書店,この先図書館」という造りでもない.

したがって,図書館の書架の前に平積みの販売本がレイアウトされていたり,スターバックスの商品を持ち歩きながら書架を見て歩いたり図書館の書籍をデスクで読みながらカフェラテを飲む… ということが普通に行われる状態になっており,図書館としてはかなりうるさい状態になっていました.静謐な環境を求めて図書館に行く,というのは望めないように思いました.

また,そういった造りなので館内での飲食も基本OKになりますので,そのうちスタバ商品をこぼしたりしてミルクや砂糖でベタベタの本が書架に戻されちゃったりするんだろうな.また2階や3階のフロアからは,いわゆるオープンテラス方式のエリアにも出られる造りになっていて,テラス席でコーヒーを飲みながら読書をどうぞ的な案内もあるので,これ書籍の傷みが進むよなぁ...と思わずにはいられません.また,図書館としてのカウンターと書店としてのカウンターは別々なのですが横並びになっていて,これも非常にわかりづらいと思いました.

次に,繰り返し言われている「本の独自分類」についてですが,これも非常にわかりづらく,なおかつどこに目指す本があるのかなかなかわからない状態でした.普通の図書館なら絶対にある分類体系一覧だとか書架の配置図もなく,検索システムで本の有無を確認して,「3F中央部付近」のような極めて曖昧な配置情報と,その書架の番号(6桁)を頼りに探さないといけないというシステムでした.また,独自分類もきわめていい加減で,書籍のタイトルとイメージだけで分類したような感じが濃厚.一例として,「住まい」というカテゴリの書架に建築技術書とガーデニング本と不動産業界本が並んでいるような状態で,これ絶対に分類からでは本を探し出せないとおもいました.
うたい文句である「料理」関係の本にしても,池波正太郎先生のエッセイ集とか「遺伝子組み換え食品が危ない」的なタイトルの本とかも一緒くたに「料理本」って,あまりにも無茶すぎ.

そして書籍の配置もかなり恣意的で,いわゆる文学全集とか事典とか新聞縮刷版とか,しょっちゅう見るものではないけれど図書館にはあってほしいという感じの本はすごい高い位置の棚(写真参照)にまとめられていて,こんなのまともに本を探せるのかよ... という状態.踏み台がどこにあるのかすらわからず(実際少ない),フロア内でまず踏み台を探してきて... なんて,本を探す気を失せさせる要素十分でした.雑誌(特に学術図書系)のバックナンバーもすごい少なくて,郷土史なんかもほんのちょろっとしかない状態.これは「知の集積」とは言えないなぁと思いました.また,子供向けの本も少ししか無い感じがして,これでは教育施設としての機能も薄い… と感じました.

結論としては,蔦屋書店併設で商業施設としての側面も持たせている以上,図書館を運営しながら何ができるのか考えていくと,「書店における商品サンプル」としての機能を図書館の本に持たせているのではないかと.したがって,なるべく売り上げに直結しそうな本を中心に書架を構成し,どう考えても売り上げに直結しなさそうな本は図書館でも目立たないところに押し込まれているのかなぁと.そう考えると,「本との出会いを演出するための独自分類」も,特に何か目的の本や調べ物があるわけではない,なんとなく暇つぶしに来たような人にとっては,「あぁ,こんな本有るんだ」のような出会いはあるのかもしれない.それで帰りに本屋で何か買ってくれれば商売的にさらにOKということなのではないかと邪推するわけだが…

少なくとも,「公共図書館に求める機能が何か」ということの問いかけにはなっていると思います.楽しさ・エンターテイメント性を求める,小難しい本や古くさい全集なんかには興味がない,というのが市民全体のニーズなら,それも有りなのかもしれないが... (でも公共図書館に「競馬のハウツー本」まで置きますかねぇ.) 少なくとも,渋谷区立図書館や東京都立図書館の運営がCCCに委託となれば,自分は有権者として反対するけど,とりあえず海老名市立図書館に対しては,海老名市民が判断を下すべき部分であろう.

そういう意味では,来年3月に多賀城でもCCC運営の図書館が開館するわけだけど,多賀城市民は海老名市立図書館を見て,どう思うのかな.welcomeなのか?

投稿者 とざわ : 20:20 | コメント (0) | トラックバック